日本エンドトキシン・自然免疫研究会

Japan Endotoxin and Innate Immunity Society

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日本エンドトキシン・自然免疫研究会の理事長就任にあたって


この度、2020年12月に開催された理事会の議を経て、順天堂大学の長岡功先生の後任として事務局を担当することになりました神戸大学の小谷穣治です。ホームページの移転に時間がかかり、ご挨拶が遅くなりました。
 日本エンドトキシン・自然免疫研究会(JEIIS)が一般社団法人になってから、嶋田紘先生、横地高志先生、谷徹先生、長岡功先生と、本研究会の設立と発展に関わった先生方が理事長を務められて参りましたが、私は臨床の傍ら研究を続けてきた程度の甚だ浅学の身であります。私のエンドトキシンとの出会いは、大学院生時代に消化器外科患者を対象に周術期の血中エンドトキシンとβ-D-グルカンを測定し、その動態と病態形成の関係に興味を持ったことがきっかけでした。その後ラット急性エンドトキシン血症モデルや急性膵炎モデルなどで様々なエンドトキシンに関わる研究をさせていただいておりましたが、まだToll-like receptorが発見される前で、なぜエンドトキシンが生体反応を起こすのかとても不思議に思っておりました。当時の指導者から「エンドトキシンのシグナル経路を解明しろ」と、研究のノウハウも知らない一介の大学院生にはとても無理なことを言われておりましたが、後にTLRが発見されて、「あれはTLRを発見しろということだったのだな」としみじみ感じ入ったことを思い出します。その後アメリカのRobert Wood Johnson医科大学外科に留学し、ヒトやマウスでエンドトキシン血症下の好中球のアポトーシスの研究をしておりました。帰国後は関連病院の外科で日々臨床に追われ研究とは無縁の生活を送っておりましたが、夏休みにアメリカ時代の研究ノートのデータ整理をしてみますと、エンドトキシン血症下の骨髄細胞の枯渇は、従来言われていた末梢への放出よりも幼若好中球がTNF receptor p55依存性にアポトーシスを起こしていることを発見し、国際学会でアワードをいただき、これをきっかけにまた研究を継続したくなり、兵庫医科大学、その後また神戸大学で臨床の傍らではありますが仲間を集めて研究を継続しております。
 本研究会は、エンドトキシン・自然免疫研究の進歩普及に貢献することを目的としていますが、実際、自然免疫研究の分野で中心的な役割を果たしてきました。本研究会をさらに発展させ、よき伝統を次の世代につなぐことが、研究会の事務局を担当するものとして果たすべき役割であると思っております。特に本研究会の特徴として、基礎研究を追求されている先生方と臨床に身を置きつつ研究をしている先生方、そして関連する企業の方々から構成されていることがあげられます。したがって、基礎、臨床、産業の人々が出会い、新しい世界を拓いていく架け橋となることも大きな使命であると考えております。
 会員の皆様におかれましては、どうぞご指導ご鞭撻下さいますよう宜しくお願い申し上げます。

神戸大学大学院医学研究科外科系講座 災害・救急医学分野
教授 小谷 穣治